■ 学習塾での販売が好調な「今解き教室」

朝日新聞社が学習塾向けに販売している教材「今解き教室」が好調のようですね。「今解き教室」が販売開始されたのは2010年頃でしょうか?なかなか良い作りの教材だと思います。

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※画像はイメージ 画像:足成

■ 昔から定評のある朝日新聞社の教育事業

朝日新聞社は、私が子供のころからすでに「朝日小学生新聞」「朝日ジュニア年鑑」といった小学生向けの教育事業を展開していました。私自身も「朝日小学生新聞」や「朝日ジュニア年鑑」にはお世話になったクチで、元愛用者という視点から朝日新聞社の教育事業には好感を持っています。もちろんそういった元愛用者という欲目的な視点を除いたとしても朝日新聞社の教育事業は世間的には定評のあるものです。ちなみに他の記事でも、朝日新聞の小学生向けの出版物について紹介しているので参考にしてください。

そういった昔から教育事業に力を入れてきた朝日新聞社が学習塾向けに開発した教材が「今解き教室」。当初は朝日新聞社側の営業戦略もあったようで学習塾経由でのみの販売だったのですが、現在では個人でも入手できるようになっています。

この「今解き教室」。生徒にとってもメリットのある教材ですが、学習塾側にもメリットがあります。例えば本教材を利用して新たに授業講座を開講することもできます。「今解き教室」を導入している多くの学習塾では、本教材を解説するための授業講座を設置しており、学習塾側にとって良い商材になっているようです。

大手の学習塾では、最近SAPIXの小学部が「今解き教室」を導入しました。また中小の学習塾でも「今解き教室」の採用がさかんなような印象を受けます。


■ 時事問題の背景知識を説明している「今解き教室」

朝日新聞社の「今解き教室」が紹介されているサイトでは、時事問題の対策テキストとしての側面を強調しています。新聞社が発行するだけあってリアルタイムの時事問題集的側面を特に強調していますが、本教材はそれ以上に時事問題の背景知識を詳しく説明したテキストである印象を受けます。

入試で出題される時事問題には単なる暗記だけで解ける問題(話題になった人名や用語)と背景知識を知っていないと解けない問題の二種類があります。そしてこの「今解き教室」は、どちらかというと後者の背景知識について、生徒の理解を深めさせることに重点を置いた教材になります。

こういった教材は、これまであるようでなかった教材ではないでしょうか。時事問題対策と言えば、市販の教材が販売されるのが毎年大体10月・11月以降。もしそれまでに生徒に時事問題の知識をつけさせたければ、前年度までの生徒に利用した教材を利用したり、講師自身が手弁当で作成したり。

問題のみならず解説を文章としてつけるならば、それらの作業は学習塾の講師にとって相当な負担になります(この作業が面白いのも事実ですが…)。この「今解き教室」が塾関係者、特に中小の学習塾にも受け入れられているのは、なんとなくうなずけることです。


■ 時事問題の背景知識を持つと他教科への応用が利く

「今解き教室」のような教材を生徒が利用するメリットについても考えてみましょう。

時事問題の背景知識を理解するということは、単に中学入試や高校入試の社会科における時事問題に対応ができるようになるだけではなく、国語の論説文英語の長文問題(特に「環境問題」のような頻出テーマ)にも応用が利きます。将来の大学入試の小論文対策にもなります。

実際に大学受験の英語の指導でよくあることなのですが、ものすごく英語のできる生徒や帰国子女の生徒が、時事問題を扱ったテーマにあたるとからきしダメなことがあります。特に環境問題の長文問題にあたると、点数が取れなくなるということは珍しくありません。

上位の私立大学(早稲田大学・慶応義塾大学・上智大学・ICUなど)の入試問題においては、昔から単に英語力のみならず科目横断的な知識を求めていることが多いと個人的には思っています。ですから上位の私立大学を受験する受験生には英語力だけでなく、時事問題のトピックを取り扱った英文を用意し、背景知識を解説することが必要になってきます。

「今解き教室」のような教材を小学生や中学生のころから利用していれば、こういった上位の私立大学の入試問題で求められる科目横断的な知識を、早い段階で身につけられるのではないかと考えます。


■ 「速読英単語」(Z会)が売れた理由

話は少しそれますが、「速読英単語」(Z会)という受験生に支持されている教材があります。「速読英単語」は私が大学受験生だった頃にまさしく出版された単語集ですが、私の記憶が確かならば最初に爆発的に売れたのは「速読英単語」の上級編ではなかったかと思います。

なぜ「速読英単語」の上級編が売れたのか-それは「速読英単語」の上級編が、時事問題のトピックを取り扱った英文を多数収録した点だったと考えます。当時の早慶受験生が過去問題を解いていく中で「どうも上位の私立大学では長文で時事問題のトピックが多く出る」と体感的に分かっていたのですが、当時良い単語集や長文問題集がありませんでした。そこに発売されたのが時事問題のトピックを多数収録した「速読英単語」の上級編でした。

時事問題のトピックや背景知識を知ることは受験に役立つのは何となく分かるんだけど、何を勉強すればよいのかは分からない-という生徒は昔も今も多いのかもしれません。




■ 学習塾の先生の手間を省いた「今解き教室」

生徒が「時事問題のトピックや背景知識を知るため」のテキストはこれまで学校や学習塾、予備校の先生がオリジナルで用意することが多かったのではないでしょうか。そのため生徒の時事問題に対する知識量というのは生徒が通った学校や学習塾、予備校の授業に左右されがちです。

市販されている既存の教材で言うとZ会の小論文講座や「新小論文ノート」(代々木ライブラリー)が「時事問題のトピックや背景知識を知るため」の良いテキストだと思いますが、両教材とも大学受験用の教材であり、リアルタイムさにも欠けるのが実情です。

新小論文ノート 2016―ベストの問題・解答例・解説集
代々木ライブラリー
2015-07

小学生や中学生を対象として、時事問題のトピックや背景知識をきちんと解説した市販の教材はこれまであまりありませんでした。

小学生や中学生を対象とした場合、先ほども述べた通り、学習塾の講師の先生がオリジナルで作成することが多いと思います。一問一答形式のような時事問題プリントを作るのは簡単ですが、時事問題のトピックや背景知識をきちんと解説を含めるとなると実に大変な作業になります。

そんなところに出てきた朝日新聞社の「今解き教室」。こういった教材の存在は学習塾の指導者にとって、とても使い勝手の良い教材となるのではないでしょうか。

新聞社の強みを生かした朝日新聞社の「今解き教室」。「今解き教室」の販売が好調なのも、学習塾の指導者が求めていたものにうまくマッチした教材だったのだと考えます。


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