■ 「早生まれ」は「遅生まれ」よりも損なの?
今回は「早生まれ」「遅生まれ」に学力の差はあるのかという点について、指導をしている側から率直に述べたいと思います。
■ ある研究結果が明らかにした「早生まれ」の不利さ
先日、ある興味深いレポートを一橋大学大学院経済学研究科・川口大司教授が発表し、ややセンセーショナルな報道がされました。
川口教授は『小学校入学時の月齢が教育・所得に与える影響』のレポートの中で、総務省の就業構造基本調査(2002年)のデータを基に25~60歳の男女を分析。3月生まれの最終学歴(平均教育年数)が4月生まれより、男性で0.2年、女性で0.1年短いという結果であったと発表した。
参考:引用元
この研究結果は単刀直入に言うと「遅生まれ」より「早生まれ」のほうが学歴が低いということを示しています。私自身、この研究結果を見た際に感じたのは「面白いことを研究するものだな」ということでした。
私は少しいじわるなのでこういうことを考えます。では、もし「営業職に従事する人物」と「理系の研究職に従事する人物」の最終学歴を比較分析したらどうなるか-。理系の研究職に従事する人は大学院まで通う人が多いので「理系の研究職に従事する人物」のほうが最終学歴が長くなるでしょう。
比較の対象は「営業職に従事する人物」と「医者」でもいいかもしれません。「営業職に従事する人物」はたいていが文系ですから、大学に通う期間(全ての人が大学に通うとは限りませんが)は4年、「医者」は全員医学部に6年は通いますから2年の差がつくはずです。
研究結果を見る限り「早生まれ」が不利であるという印象を受けますが、この分析や結果をどう捉えるかは人それぞれだと思います。統計のトリックについてはここで議論することではありませんし、こういった研究をすることも大切なことだと思います。しかし、少し「早生まれは不利である」というセンセーショナルな報道の仕方にはやや疑問を持ちます。
■ 早生まれは損だという刷り込み
私が子供の頃は確かに「早生まれ」「遅生まれ」を気にする人が多かったのですが、最近ではあまり聞かない言葉になりつつあります(私の周囲だけかもしれません)。
確かに乳児期における1か月や12か月という期間は、乳児の成長の早さを考えると、知能的にも肉体的にもひじょうに差がつきやすいものかもしれません。ですから「早生まれ」「遅生まれ」を多少考慮することも必要なのでしょう。
しかし、小学校入学後の学童期においては、少なくとも知能的には(肉体的な部分に関しては専門家ではないので分かりません)その差はないと、ある程度の自信を持って言えます。
小学校入学後の学童期に知能的に差がつくとするならば、「早生まれ」「遅生まれ」といった先天的なものよりも、ご家庭での教育方針といった後天的な点のほうが影響が大きいと感じます。これは、少なくとも指導をしていく中で感じる率直な感想です。
多くの塾教育に関わる人も同様の意見なのではないでしょうか?少なくとも私の周囲では「早生まれだから」「遅生まれだから」といった話は聞いたことがありません。私自身、「早生まれ」と「遅生まれ」の間には基本的に学力の差はないと考えます。
■ 言い訳に使われる「早生まれ」というコトバ
「早生まれ」「遅生まれ」という言葉は、本人や周囲よりも、むしろ親御さんのほうが気にされることが多いのかもしれません。そしてその不安に便乗したメディアでセンセーショナルに語られることが多いような気がします。
「早生まれ」という言葉が使われる際には、悲しいことですが「(早生まれだから)勉強ができない」「(早生まれだから)運動ができない」というように、ネガティブな文脈で用いられます。
言い方は良くないかもしれませんが、もしかしたら、子供の学力や運動能力に不安がある場合に、「早生まれ」という言葉が、親御さんの良い逃げ道になっているのかもしれません。
しかし、先ほども述べた通り、「早生まれ」「遅生まれ」といった先天的なものよりも、ご家庭での教育方針といった後天的なものの影響が大きいと、個人的には感じます。
■ 早生まれ遅生まれに学力の差はない
私自身の意見を率直に言わせてもらうならば、早生まれ遅生まれに学力の差はありません。もし「早生まれ」「遅生まれ」を過度に気にされている親御さんがいましたら、あまり考えすぎずないでほしいですし、お子さんにも、「早生まれ」「遅生まれ」というものを意識させないでほしいと考えます。
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