■ 都心への移転が報道された中央大学法学部

2015年11月、中央大学法学部が多摩キャンパス(東京都八王子市)から後楽園キャンパス(文京区)に移転するとの新聞報道がありました。今回は、この中央大学法学部の移転計画について少し考えてみたいと思います。

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※画像はイメージ 画像:PAKUTASO

■ 中長期事業計画に盛り込まれる中央大学法学部の移転

報道によると、中央大学は八王子市の多摩キャンパスにある法学部を2022年までに文京区の後楽園キャンパスに移転、同時に新宿区の市ケ谷キャンパスにある法科大学院も後楽園キャンパスに集約、法学部と法科大学院の一体運用で「法科の中央」のブランドイメージを強化する方向性を打ち出す中長期事業計画を近く公表するとのこと。

看板学部を八王子から都心へ回帰させることで中央大学全体のブランドを高め、さらには受験者を増やそうという思惑が読み取れます。


■ MARCHの中で頭ひとつ抜け出した明治大学

中央大学は私立大学の学校群で言うと、早慶上智の次に位置するMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)と呼ばれる難関校グループに属します。

MARCHの各学校には伝統と個性があり、各々難関校として地位が確立されているのですが、最近ではこのMARCHの中から明治が頭ひとつ抜け出したと言われ、実際に明治の受験者数は過去に比べて大幅に増加している状況が続いています。

さらにMARCHの中でも多摩地区にキャンパスを移転した中央や法政は、その立地が偏差値や受験者数に影響を与えているのではないかとも言われてきました。


■ 「ローテーションの谷間に登板する投手」のような扱いを受けている中央大学と法政大学

城南地区で高校生の受験指導をしていて、生徒が受験戦略から中央や法政を外す傾向にあるという点は、以前から強く感じることでした。

これは地域特性もあるのでしょうが、明治や青山学院を第一志望として挙げる生徒が多い一方で、中央や法政を第一志望として挙げる生徒はあまり多くありません。

同様に早慶上智のいわゆる"すべり止め校"としても、まず早慶上智の日程を決めて明治や青山学院を組み込み、最後の空いたところに中央や法政を入れていくという、野球で例えると「ローテーションの谷間に登板する投手」のような扱いを中央や法政は受けている印象があるのです。


■ 都心の大学を志向する城南地区の大学受験生

基本的に自宅から通学することになる城南地区の大学受験生にとって、どうしても立地というのは受験校選定における重要な要素になるようです。多摩地区へと向かうよりもやはり通学に便利な都心の大学を志向しやすいのです。

私は学生時代、中央に通う知人に連れられて中央大学・多摩キャンパスを訪問したことがあるのですが、実際はそれほど遠いものではありません。JR南武線で北上し京王線、キャンパスは広大で当時から学食は有名でした。閑静な場所にあり、勉強する環境としても最適ではないかという印象を受けたものです。

そういったよさを生徒に伝えても、やはり心理的距離感からか生徒の受験戦略からは外れてしまうのです(もうひとつ大きな理由があるのですが、それは最後に書きます)。中央や法政を受験日程に組み込むのなら明治や青山を増やし、すべり止めに明治学院を入れるといったケースが多いように感じられるのです。

明治学院はCIもさることながら、2000年代に入って立地面で人気となった印象を受けます(不思議な話なのですが、城南地区の学生は南北の移動に抵抗感を感じる一方、東西の移動についてはあまり抵抗感がない傾向があるようにも思えるのです)。


■ 明治大学躍進の背景は立地?

受験者数を大幅に増加させた明治について少し述べさせてもらうと、明治は元々男性の親御さんに熱烈なファンが多いのが印象的した。ラグビーや野球の影響が強いのではないでしょうか。

それに加え、最近では明治出身の著名な芸能人が増えたため「おしゃれな大学」という評価が与えられ、女子からの人気が高まっています(年配の方に言うと相当驚かれます)。ここ10年で明治のブランドイメージは相当強化され、MARCHの中から頭ひとつ抜け出した状況となっています。

そして明治が躍進した背景のひとつにあるのが立地ではないかなと個人的には考えます。キャンパスは新宿・渋谷に近く、受験生にとっては相当魅力的なのです。


■ 中央大学法学部が都心回帰を決めた理由

今回、中央大学法学部が都心回帰を決めたことは、立地で優位に立ち、「おしゃれな大学」という評価が与えられた明治の躍進と決して無関係ではないでしょう。

さらに中央大学は2010年に横浜山手女子学園を合併し中央大学附属横浜中学校・高等学校を設立。2013年には横浜市都筑区(最寄り駅はセンター北駅)に移転させ、人気を高めた成功事例が存在します。(過去に中央大学附属横浜中学校・高等学校と立地の関係性について記事を書いているので参考にしてください)

参考:塾講師から見た中央大学附属横浜中学校・高等学校の評判

こういった背景が重なり、看板学部を八王子から都心へ回帰させることで中央大学全体のブランドを高め、さらには受験者を増やそうという意思決定がなされたのではないかと想像できます。


■ 中央大学法学部の今後の偏差値を予想する

では、この移転により中央大学の人気や偏差値は上昇するのでしょうか?

おそらく移転直後の数年は、中央大学法学部自体の受験者数は急激に増加し偏差値が上昇するでしょう。ただし、それが持続したり他の学部に波及するかは、今後の中央大学の経営戦略に依存します。

個人的には、過去に中央が慶応の後追いで総合政策学部を設置した状況に似ているのではないかと思います。一時的な人気や偏差値の上昇は期待できるものの、それを維持・他学部へ波及させるには相応の努力が必要ではないかと。

20年以上かけてSFCは一種独特なカルチャーを作り上げてきた印象を受けます。それに対し中央の総合政策学部はどのようなカルチャー、受験生に対する魅力を作り上げてきたでしょうか?同様に明治大学は明治大学で、やはり20年近い年数をかけて女子に人気の大学という地位を(外から見ると地道に)築きあげてきました。

また「法科の中央」は誰もが認めるところですが、近年の司法試験改革の影響もあり"食えない弁護士"が増加し、弁護士という職業に魅力を感じない高校生も増えているのも事実です(これは弁護士に限らず、公認会計士や税理士でも言えることです。逆に薬剤師資格などに興味を示す高校生が増えているというのが時代を感じさせます)。

このような状況を総合的に考えると、中央大学の一時的な人気や偏差値の上昇は期待できるものの、それらを維持したり他学部へ波及させるためには、さらなる継続的な戦略が必要になるのではないかと、余計なお世話なのですが思ってしまうのです。




■ 実はかなり大きい中央大学附属横浜の存在

そんな中で、個人的には中央大学のさらなる躍進の鍵となるのは、中央大学附属横浜中学校・高等学校の存在なのではないかなとも思うのです。横浜・都内城南地区において、中央大学附属横浜のブランディングが成功することで、相対的に横浜・都内城南地区の父兄や受験生の中央大学へのブランドイメージが向上、それが全国に波及する可能性を秘めているのではないかと感じます。

現状においては中央大学附属横浜のブランディングはかなり成功しているように見えますが、結果が出るのはどうしても数十年先。継続してブランディングを続けてほしいと思います。


■ 今後の中央大学の躍進に期待

と、生意気なことを多く書いたのですが、さらに何も考えずに勝手なことを言わせてもらうならば、50年、100年先を考えて中央大学附属横浜のある都筑区あたりへの大学全面再移転をしたり、大学の入試問題を青山学院大学なみに易化させる(いわゆるスピード型の入試問題にして高得点を取ったものを合格とするタイプ)だけで、爆発的に中央大学全体の志願者が増えるとも感じます

特に入試問題は、過去問題を解いて(併願として入試問題の傾向が他の学校と合わないため)中央大学を受験日程から外す受験生が少なくないのも事実です。

いずれにせよ、今後の中央大学の躍進に期待したいと思います。


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