■ 不登校や引きこもり・高校中退は少なくない
今回は不登校や引きこもり・高校中退についてのお話をしたいと思います。
お子さんが不登校や引きこもり・高校中退となってしまい、「どうすればよいのか」と悩む親御さんも少なくないことでしょう。
■ 塾や予備校が不登校や引きこもり・高校中退の受け皿となるケースもある
塾や予備校というのは、不登校や引きこもり・高校中退となってしまった生徒さんの受け皿となるケースが往々にしてあります。私自身も過去に不登校であったり、引きこもり・高校中退といった生徒さんを複数指導をした経験があります。
今回は、そのあたりのお話を中心にしたいと思います。
■ 不登校や引きこもり・高校中退は身近な存在
不登校や引きこもり、そしてその結果として高校など学校を中退してしまう生徒さんというのは、周囲の話を聞く限りは少なくないようです。
私自身も過去にそのような経験をした生徒さんを複数指導をしたことがありますが、いずれの生徒さんも他の生徒に比べて特別"何か変わったところがあった"という印象は感じませんでした。
もちろん学力的にも性格的にも、同年代に比べて何かが劣っているということは一切ありません。
■ 不登校や引きこもりになる子は「感受性が強い」子が多い?
ただ、あえてこういった経験をする生徒の共通点を挙げるとするならば、やや「感受性が強い」のではないかという印象を受けたことは確かです。無論、これは否定的な意味ではありません。
「感受性が強い」ということは素晴らしい性格であり、物事を多面的に見る能力や他人に共感する能力に優れていることを意味します。不登校や引きこもり・高校中退になる子に限らず、「感受性が強い」生徒は、私たち大人も時にハッとするような考え方やモノの見方を示してくれることが多いものです。
さらに「感受性が強い」生徒からは、論理的思考であったり、深く思索することを得意とすることが多い印象も受けます。理詰めで説明すると納得しやすいという特長もあるようです。
あくまで個人的な感想ですが、不登校や引きこもり・高校中退になる子は、「感受性が強い」点がマイナス面に働き、周囲の生徒や先生をはじめとする大人の何気ない言葉であったり対応が引き金となり、不登校や引きこもり・高校中退を引き起こしてしまったケースも多いのかもしれません。
■ 親御さんは過去にベクトルが向かいがちに
また、不登校や引きこもり・高校中退といった経験をした、あるいは現在進行中の生徒さんを持つ親御さんと面談すると、「自責の念に駆られている」親御さんが少なくないようです。親御さんとしてみれば、お子さんが「なぜ、学校へ行くことができないのか」「自分の育て方が悪かったのか」などと悩まれることでしょう。
この文章を読まれている親御さんの中にも、もしかしたら不登校や引きこもり・高校中退といった経験をした、あるいは現在進行中のお子さんを持ち、「自責の念に駆られている」方がいるかもしれません。そんな親御さんに提案したいのは、ぜひ未来にベクトルを向けてほしいということです。
こういった状況に直面したとき、どうしても親御さんは「自分の育て方が悪かったのか」「あの時こうしていればよかったかな」などと、過去にベクトルが向かいがちになってしまいます。
そうではなく、親御さんには現在の状況を受け入れ、今後どのような教育を子供に受けさせ大学進学まで持っていくかを前向きに考えてほしいと願います。すなわち未来にベクトルを向けることに力を注いでほしいと思うのです。
■ 子供の学力をつけることをおろそかにしない
先ほど、不登校や引きこもり・高校中退といった経験をする生徒からは、やや「感受性が強い」のではないかという印象を受けると述べました。「感受性が強い」生徒にとって、小学校や中学校、場合によっては高校における狭いコミュニティは、どうも苦痛な存在であるようです。
無論、小学生や中学生であるならば復学を目指すのも一つの手です。しかし高校生であったり、本人が嫌がる場合、無理強いしてまで復学させる必要もないと個人的には考えます。
ただ、その代わりと言ってはなんですが、教育だけはきちんと受けさせてほしいと思います。塾に行かせるでもいいですし、塾でなくとも小学生・中学生ともに良質の自習用教材(教科書ガイドと教科書ワークなどでもいいでしょう)が数多く出版されているので、それらを活用して学力をつけてください。
学校に行かなければきちんとした教育を受けられないということはありません。工夫次第で、家庭だけでも同年代の子供たちと同程度、場合によってはそれ以上の学力をつけることは可能です。
しかし、不登校や引きこもり・高校中退のお子さんを持つ親御さんの中には、どうしてもベクトルが過去(例えば自責の念)や現在(例えば復学)に向かい過ぎて、未来(お子さんの大学進学)に目を向けず、子供の学力をつけることがおろそかになっている方もいらっしゃるのではないかなという印象を受けるのです。
■ 大学進学までのルートは一つではない
なぜ、ここまで子供の学力をつけることにこだわるかというと、基礎学力さえきちんとつけておいてさえくれれば、仮に中学を卒業した時点でお子さんを預けてもらうことで、大学進学に向けて、いかようにでも育てることができるからです(これは塾教育に携わる多くの人が同様に思うことかもしれません)。
例えば高校に進学しなかったり高校を中退したとしても、高校認定試験を受験し合格することで大学入試を受験することが可能になります。高校認定試験は、中学卒業程度の基礎学力があれば、適切な学習を進めることで18歳までに合格することが可能です。
学校に通わなくとも大学入試を目指すことはできますし、むしろ早めに塾に預けてくれればくれるほど、時間的に余裕がある分、やり方によっては難関大学に合格する可能性も高くなります。
個人的な経験を述べさせてもらうと、中学3年生で保健室登校になってしまい高校に進学しなかった男子生徒が、高校認定試験を経てMARCHに合格した例や、高校の早い段階でやはり中退してしまった女子生徒が、やはり高校認定試験を経て早慶上智に合格した例があります。これらの例は決して稀な例ではありません。
いずれの場合においても親御さんのベクトルが未来に向かっていたことが、彼らの才能を見事に開花させたのではないかと感じるのです。例えば保健室登校になってしまった段階で学力を落とさぬよう家庭での教育に力を入れ中学卒業と同時に塾に通わせる、高校の早い段階でやはり中退してしまった段階で塾に通わせるといった親御さんの素早い判断が、よい結果を生み出したのではないかと思うのです。
大学進学までのルートは一つではありません。ですから、お子さんがもし不登校や引きこもり・高校中退といった状況になった場合には、ベクトルを過去や現在に向けるだけでなく、ぜひ未来にも向けてあげて、子供の学力をつけることや大学進学を目指すことをおろそかにしないでほしいと思うのです。
最後に一冊、本を紹介したいと思います。児童精神科医であった故・渡辺位(わたなべ たかし)さんが著した『不登校は文化の森の入口』(東京シューレ出版)という書籍です。本書は不登校や引きこもりなどを、子供の防衛的危機回避反応として捉え、彼らの心情をわかりやすく教えてくれる良書です。
以上、参考にしていただければ幸いです。
▶受験合格の秘訣:承認欲求を満たす(=ほめる)ことで成績が伸びることもある
▶「早生まれ」「遅生まれ」に学力の差はあるのか
▶親子の会話の重要性-フリードリヒ2世の赤ちゃん実験の話