■ 小学6年生で英検4級や3級を取得することは正直どうなのか?

今回は、小学校6年生で英検4級や3級を取得することに対する個人的な意見を述べたいと思います。

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※画像はイメージ 画像:足成

■ 英検4級・3級のレベルはどのくらい?

小学校6年生で英検4級や3級を取得することに対する個人的な意見を述べる前に、まず英検4級・3級はどのくらいのレベルなのかを確認しましょう。

英検4級は文法面・単語面ともに公立中学校の2年生レベル英検3級は同様に公立中学校の3年生レベルです。

ちなみに私たちはよく英検と略して言いますが、正式には「実用英語技能検定試験」と言います。

■ 普通の小学6年生が英検4級・3級に合格することは可能か?

普通の小学6年生が公立中学校の2年生レベルである英検4級や公立中学校の3年生レベルである3級に合格することは可能か?ということについては、十分可能であると言えるでしょう。

このあたりを率直に言わせてもらうと、例えば筆記・リスニングの試験となる一次試験の問題は英検4級・3級ともに65点満点。合格得点率が約6割。だいたい40点取れば一次試験は合格となります。マークシート形式であるという点を含めて考えると、それほどハードルは高くありません。

また英検3級の二次試験(面接)もそうなのですが、英検4級・3級の問題自体、だいぶパターン化されている面があります。

言い方は悪いですが、ある程度の知恵のある小学生なら基本的な単語や文法を覚えて問題慣れさえしてしまえば、ゲーム感覚で解けてしまうのです。

abcであったり基本的な単語がわかっている小学生であるなら、週2・3回のレッスンを実施するとして半年の学習で英検4級、1年の学習で英検3級は合格可能なのではないかと感じます。


■ 小学校6年生で英検4級や3級を取得することに対する個人的な意見

と、以上を踏まえたうえで小学校6年生で英検4級や3級を取得することに対しての個人的な意見なのですが、「特に小学生のうちに無理をして取得する必要はない」と私自身は考えます。

近年、英検を取得することが大切であるという風潮が大きくなっていて、もちろん、それはそれで事実なのですが、個人的には英検とはあくまで中学生以上が「自分自身の英語力がどの程度ついたか」を測るためのツール、あるいは自信をつけさせるためのツールであると思っています。

例えば公立中学に通っている中学3年生で、英語の実力はあるのだけど周囲も定期試験でよい点数をとるので、なかなか自信がつかない生徒などに英検3級を取得させると、大きな自信となり学習の励みとなります。英検とは本来そのような存在なのではないかなと思うのです。

また小学生のうちからの英語教育の重要性も声高に叫ばれており、それに乗っかった一部の塾業界は、どうしても小学校6年生にまで英検4級や英検3級を取得させようと親御さんを巻き込もう(授業を取らせよう)とします。しかし、小学生で英検4級や英検3級の学習に力を入れるのだったら国語・算数・理科・社会の基礎知識を増やした方がよっぽどよいのではないかなと思います。

特に中学受験生は国語・算数・理科・社会の知識を増やして、ワンランク上の志望校を目指した方が得策ではないでしょうか。

ただ稀に中学受験をしない小学生で、学校の授業を軽々こなしてしまいポテンシャルを持て余している生徒がいます。このような余裕のある生徒には、英検4級や3級を積極的に取得させるカリキュラムを組むと面白いかもしれません。


■ 中学入試では英語入試が増えている

一方、最近の中学入試では、帰国子女以外の生徒に対して"英語"を入試科目として取り入れている学校が増えています。2015年度にはなんと全国32校で実施されたのだとか。

"英語"が入試科目として取り入れられるケースの特徴としては、英語を重視した学科・コースの入試として、それから複数の入試方式が行われている場合に、そのひとつの方式として実施されていることが多いようです。

以下に首都圏の2016年度入試で、英語入試の実施が予定されている代表的な学校を見てみましょう。

東京都市大学付属 グローバル入試-英語・算数・作文(日本語)
東京都市大学等々力  特別選抜・特別進学第3回-2科+理科・社会、または+英語
広尾学園 インターAG-英語・算数・国語・面接(英語、日本語)
郁文館 GL特進選抜入試-国語・算数・英語から2科選択
郁文館 特別編成入試-国語・算数・英語から2科または3科
実践女子学園  グローバルスタディーズクラス-国語・算数・英語
共立女子第二 英語特別選抜-作文(英語、日本語)・面接(英語)

これら以外にも桐蔭学園・桐蔭学園中等教育・暁星国際・公文国際学園・目黒学院などの中学入試において英語入試が実施予定です。

埼玉栄が実施する英検3級以上の合格者に対し作文と面接のみの試験を行う「スーパーイングリッシュ入試」や、専修大学松戸のように、英検合格の実績を一般試験に加算する(英語の試験は実施せず)入試のように、英検合格者を優遇する入試形態もあります。

いずれの入試においても、求められる英語のレベルはおそらく英検4級から3級程度でしょう。


■ 中学入試に英語入試が導入される理由

"英語"を入試科目として取り入れる傾向については賛否両論があります。私自身は大きな声では言えませんが、複数の入試方式が行われている場合のひとつの方式として実施されていても、やや否定的な見解を持ちます。"英語"重視の流れは主流にはなってほしくないと感じます。

もちろん学校側がこういった"英語"を入試科目として取り入れることは理解できます。英検4級や英検3級程度の"英語"ができる小学生を入学させると、中学入学後の英語指導がものすごく楽になるからです。

中高一貫教育では、一般的に中学3年生で高校1年生の学習内容に入ります。もし英検4級や英検3級程度の"英語"ができる生徒を英語入試で獲得したならば、もっとはやく高校1年生の学習内容に入ることが可能になるでしょう。

しかし、仮にですが、"英語"を入試科目として取り入れる傾向が今後の中学入試の主流になってしまうと、中学受験生の学習負担がさらに増加するでしょうし、理科・社会といった科目が軽視される可能性も出てくるのではないかとも感じます。

実際、"英語"を入試科目として取り入れている学校の一部からは、理科・社会といった科目の代わりに英語を入試科目に導入している印象を受けるのです。

帰国子女ではなく日本で生まれ育った生徒を対象とした英語入試というのは、例えば中学受験をする決定が遅く理科・社会まで手が回らなかったけど"英語"の勉強は何らかの理由でしてきて案外得意である、というような特殊な状況にある受験生に対する救済措置としてだけ存在してほしいと考えます。


■ 大学入試の英語では理科・社会の知識が生きてくる

話はすこしずれますが、高校生の英語指導をしてよく感じるのは"小学生時代に学ぶ理科・社会の知識"は意外と重要であるということ。

特に大学受験で出題される英語長文は単に英語ができればよいかというとそういうわけでもなく、難関大学になればなるほど背景となる科目横断的な知識が求められます。

例えば第二次世界大戦前後の歴史の話だったり、ミツバチの8の字ダンスの話だったり。そういった英語長文が出題された際に背景となる知識が不足していると、読解に時間がかかる場合もありますし、授業では内容についての説明も必要になったりします。

そして科目横断的な知識の原点になるのは、実は"小学生時代に学ぶ理科・社会の知識"だったりするのです。




■ 英検4級や3級を取得する前に理科・社会をきちんと学ぼう

このような理由もあり、個人的には小学6年生で英検4級や3級を取得する余裕があるなら、先々の大学受験のことも考えて理科・社会の知識をきちんと身につけてほしいと思いますし、"英語"を入試科目として中学入試に取り入れる傾向については、やや否定的な見解を持つのです。

というわけで「小学生は"英語"を重視して英検4級や3級を取得する前に、理科・社会をきちんと学ぼう(もちろん国語・算数もね)」が私の極めて個人的な意見となります。

以上、参考にしていただければ幸いです。


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